週末、たまたま耳鼻咽喉科専門医の先生とお話できる機会があったので、前から気になっていたことを聞きました。
舌癌の治療は耳鼻科が行うのか?口腔外科が行うのか?ということです!
堀ちえみさんは何科で治療したのか?
舌癌はその名の通り「舌にできる癌」ですが、堀ちえみさんが舌癌であることを公表したことをきっかけに、世間の舌癌に対する関心も高まったように思います。
僕が気になったのは公表した時のニュースです。
最初は
「口腔外科と形成外科の合同手術で12時間以上かかる」
と報道されていましたが、次の日になると
「口腔外科、耳鼻咽喉科、形成外科の合同手術が予定されている」
と、耳鼻咽喉科が追加されていました。
これが気になっていたことですね!
そこでなぜ突然、耳鼻咽喉科が加わったのか耳鼻咽喉科の先生に聞いてみました。
口腔外科の治療範囲は?
お話を聞いて後からWikipediaで調べてみると、口腔外科の診療範囲は平成8年の厚生労働省の審議会において、
標榜診療科としての歯科口腔外科の診療領域の対象は、原則として口唇、頬粘膜、上下歯槽、硬口蓋、舌前3分の2、口腔底に、軟口蓋、顎骨(顎関節を含む)、唾液腺(耳下腺を除く)を加える部位とする。(出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
と定義されています。
今回のテーマ「舌癌」に関しては舌前3分の2と記載されているわけですね。つまり
舌前3分の2に収まる場合は口腔外科
舌後ろ3分の1に及ぶ場合は耳鼻咽喉科
となるわけですね。
早期癌と進行癌での治療法の違い
舌癌は根治性(癌をからだの中からゼロにできる可能性)が高い手術加療が行われることが多く、堀ちえみさんも手術加療を選択されておられました。
早期癌でも進行癌でも手術加療が行われるようですが、早期癌と進行癌ではその切除の範囲が大きく違うようです。
早期癌の治療
早期癌=手術で切除する範囲が狭い、ということになりますので、基本的には舌の一部を癌を含めて切除する「舌部分切除」や舌を癌のある方の半分を切除する「舌半切除」が行われるようです。
この場合、舌をそのまま縫ったり、特殊なシートで傷口を保護することで手術が終われることが多いようですね。
進行癌の治療
進行癌=手術で切除する範囲が広い、ということになりますので、舌が半分以上なるなるケースもあるようです。
その場合、なくなった部分を作り直す「再建手術」が必要となり、再建手術を形成外科の先生が担当されるとのことでした。
ただ、再建手術を必要とする進行癌の場合は
- 舌の後ろ3分の1が手術範囲に含まれることが多い
- 首のリンパ節転移することが多いため、首のリンパ節の郭清術が必要になる
の2点の問題点があることから、口腔外科ではなく耳鼻咽喉科での治療となることが多いようです。
厚生労働省の審議会が行われた平成8年以前は、口腔外科の先生が舌癌の加療を行うことも多かったようです。舌癌は首のリンパ節転移が多いことが有名で、その場合は首の手術も必要になります。首の手術は医師免許を持っている耳鼻咽喉科の範囲となりますので、舌癌の治療自体が近年では耳鼻咽喉科で行われる機会が多いとお聞きしました。
口腔外科の先生は歯科医の先生なので、確かに首の手術を歯科の先生がするというのも変な話だし、ちょっと怖いような気もしますね。笑
堀ちえみさんのケース
今回の堀ちえみさんのケースは恐らく診断がついた時点では手術範囲が舌前3分の2で収まっていたため口腔外科(歯科)が手術を行う予定であったが、最終的には舌後ろ3分の1が切除範囲に含まれる、もしくは首のリンパ節の郭清術が必要と判断したことから、耳鼻咽喉科は翌日のニュースで含まれたのではないでしょうか?
これは僕の個人的な予想ですが。笑
舌癌の治療は耳鼻科が良い?
耳鼻咽喉科の先生にお話を聞いた後なので主観は入っていますが、僕は
舌癌の治療は耳鼻咽喉科でしたほうが良いんじゃない?
と思いました。
理由は
- 耳鼻咽喉科にできて口腔外科にできない治療があるから
ですね!
少し難しい話になりますが、2018年に本庶佑(ほんじょたすく)先生がノーベル賞を取られました。
このノーベル賞を取った研究の結果生まれたのが「オプジーボ」という薬になります。
この「オプジーボ」は今までの抗がん剤とは少し違って、免疫療法という自分の免疫細胞で癌をやっつけるのを助ける薬剤みたいです。
この「オプジーボ」も口腔外科(歯科)の先生は使えない(使うためには医師のサポートが必要)となっているようです!
なので、舌癌の治療は
- 舌後ろ3分の1を含めた手術
- 首のリンパ節の手術
- オプジーボという新しい治療
の3つができる耳鼻咽喉科での治療が良いのではないかと考えました!
癌は以前に比べて身近な病気になっていますし、舌癌のように耳鼻咽喉科や口腔外科のような複数の科が治療を行う疾患の場合、診療科の選択は非常に重要だと思います。
地域によっては口腔外科のほうが舌癌の治療を沢山している施設もあるとは思いますので一概には言えませんが、舌癌を患った方が診療科を決める手助けになればと思います。