こんにちわ、かなりおです。
今回はちょっと真面目な話になりますが、気になるニュースを見つけました。
『ゲノム編集ベビーの中国・賀副教授が実刑判決』というニュース。
『ゲノム編集ベビー』は受精卵に遺伝子改変を行った上で生まれたベビーのことで、2016年以降に双子の赤ちゃんを含む3名が中国で出生し問題になっていました。
この倫理を問う裁判が中国で行われており、先日、懲役3年、罰金約4700万円の実刑判決が下されました。
今回、中国で発覚した『ゲノム編集ベビー』の内容は
- 夫がHIVに感染した夫婦が対象
- 受精卵にHIVに感染しないよう遺伝子改変を行った
となっています。
この件の問題点は
- 倫理・道徳に反していること
- 受精卵にHIVを感染させないために、遺伝子改変は不要だったこと
- 出生した3名のべビーの今後の健康状態がわからないこと
です。
倫理的問題
現在、日本でも臨床研究を行う上で倫理的問題が非常に厳しくなっています。
例えば臨床研究を行う場合、各施設に設置されている『倫理審査委員会』という部署へ行う研究の目的、内容、必要性などを詳しく提示し、『倫理審査委員会』の審査が通った上で研究を行う必要があります。
今回の『ゲノム編集ベビー』に関しては、中国の賀副教授が倫理審査委員会へ提出する書類を捏造し、倫理審査委員会を通過させており、ここに研究倫理的な問題が生じています。
受精卵へのHIV感染を防ぐのに遺伝子操作は必要だったのか?
これは『NO』になります。
現在は夫がHIVに感染している場合でも体外受精により、理論上、感染のリスクを避けることが可能です。
体外受精を行う前の操作とし、精子のウイルス除去を行います。
さらにウイルスがいないことを検査で確認した精子を卵子と受精させ、その受精卵を子宮内に戻すことで、夫がHIVに感染していたとしても、その感染リスクを避けることが可能です。
今回の『ゲノム編集ベビー』に関しては夫がHIV感染しており、受精卵へのHIV感染を避ける目的で遺伝子改変を行っています。
また、今回の遺伝子改変にあたり、母親は「子供たちが先々にHIVに感染するリスクを避けられるのであれば」ということで同意しています。
これに関しては「先々にHIVに感染するリスク」というのは周産期のリスクだけでなく、「出生後、HIVに感染した父親と一緒に生活する上で」ということも含まれているのかもしれません。
賀副教授らがどのようにインフォームドコンセント(説明と同意取得)を行ったのかも問題ですね。
出生した3名のベビーの今後の健康状態は?
今回の遺伝子改変は、HIVがヒトの細胞に感染するさいに使用するタンパク質を除去する操作を行っています。
このタンパク質はCCR5と呼ばれており、ヨーロッパには先天的にCCR5を持っていない人が数%存在するようです。そのため、このタンパク質が欠損することで、極端に寿命が短くなったり、外見が変化したりなどの問題点はないようです。
しかし、やはり問題なのは「遺伝子操作を加えている」という点ですね。
今回生まれてきたベビーたちは遺伝子改変によってCCR5を欠損させられていますが、他の遺伝子には影響ないのでしょうか。
今後、どのような影響が出てくるかは、このベビーたちの成長を見守るしかありません。
このベビーたちが健康に育ったとしても、このような人体実験のような研究は、やはり倫理的に行われて良いものではないと思います。
今後について
今回行われた『遺伝子改変』を実際の医療で使用する時代が、数年後には来ると思います。
ただ、それはやはり『安全性の確立』『倫理的な問題点の解決』が絶対的に必要だと思います。
似たようなケースに『クローン技術』がありますが、これに関してはすでに現在の技術で実現可能なようですね。
けど「自分の大好きな人が亡くなっても、クローン技術で作り直せる」みたいな時代は想像するだけで恐ろしいです。
今回の『ゲノム編集ベビー』に関しても、倫理的に必要な場合にのみ限って使用できるような国際的なシステムの構築ができることを、今後期待していきたいと思います。
記事を読んでいただいてありがとうございました。